「クリスマスディナーは君と」【第3回】短編小説の集い
こんばんは!アッツです!!
クリスマスですね!!みなさん性の6時間は楽しみましたか!?
僕ですか!?僕は午前3時まで仕事してました!!
残業代ですか!?出るわけないじゃないですか持ち帰って仕事してたんで!!
まったく師走ってやつはくそったれですね!!
はい、そんな訳でわあわあゆうとりますけどね。
短編小説の集いの締め切りがイブだと思ってたら、今日までらしいのでね。
多分サンタさんが締切1日伸ばしてくれたんだと思います。
【第3回】短編小説の集いのお知らせと募集要項 - 短編小説の集い「のべらっくす」
今回はもうよく分かんないテンションですけど、参加できる喜びを噛みしめながら書きたいと思います。
神に感謝……、アーメン……。
「クリスマスディナーは君と」
イルミネーションが輝く煌びやかな夜の街を、斎藤は一人早足で歩いていた。
急ぎの用事があるでもなく、後はもう帰宅するだけだったが、クリスマス・イブの街に一人でいる事が恥であるような錯覚が斎藤の足を速めていた。
不意に、何かが進行方向に現れる。
顔を上げると、連れ添った男女が目の前をのろのろと歩いていた。
追い越そうにも歩道は狭く、車道に出なければならない。
それも癪な気がして、斎藤は眉根を潜める。
歩む速度を落としてみたが、それはそれでこのカップルを尾行しているようで、気分が良くない。
進行方向を見ると、しばらく先まで分かれ道の類は無さそうだった。
小さくため息を吐く。
そのままゆっくり歩くのも、車道から追い越すのも気が乗らない。
もう少し歩くと、歩道の脇に牛丼屋がある。
ーーせっかくのクリスマスに牛丼かーー
そう思わなくも無かったが、もう一つだけため息を吐いて、斎藤は自動ドアをくぐった。
店内は混雑しているという程でもなかったが、恐らくは斎藤と似たような境遇であろう男性客で、それなりに繁盛しているようだった。
気のせいか、今日ばかりはどの客も浮かない顔をしている気がする。
並盛の牛丼を注文して、特にする事も無くスマートフォンをいじっていると、自動ドアが開き寒風が吹きこんだ。
「いらっしゃいませ!」
入口側に座った事に少しだけ後悔していると、入ってきた客が向かいのカウンターに座った。
女だった。
お世辞にも美人とは言えない。
それどころか、いかにもクリスマスと無縁そうな、重量級の化粧っ気の無い地味な女。
「牛丼特盛」
女は体脂肪率の高そうな甘ったるい声で、それだけを店員に告げた。
斎藤は、普通の男と同じように美人を好み、普通の男と同じように華奢な女性を好んだが、だからといって、太った女が嫌いな訳でもなかった。
声をかけて、仲良くなれたら、自分のクリスマスも少しはマシなものになれるのでは、と思った。
どちらにしても独り身同士だ。お互いにとって悪い話ではない。
小銭をテーブルの上に出し、店員を呼ぶ。
「君、あちらのレディーに生卵を。」
店員は瞬きをして「はい?」と答えた。
斎藤は、辛抱強くもう一度同じ事を言った。
「君、あちらのレディーに生卵を。」
まだ学生だろうか。斎藤と同じように恋人がいないと思われるその店員は、不自然な程の無表情で頷き、小銭を受け取った。
店員が小皿に卵を入れて、女の前に差し出す。
「あちらのお客様からです。」
女が斎藤の方を見た。
店員は小走りに厨房の方に向かい、肘に顔を押し当てていた。
斎藤は既に十分に自分の言動を後悔していたが、女と目が合うと、ウインクをしてみせた。
女はしばらく、ぼうっと斎藤の顔を見つめた。
おもむろに女がスマートフォンを取り出す。
アドレスくらいは交換できるのかもしれない。
そう思ったのは一瞬の事で、女はすぐさま何らかのアプリを起動し、猛然と文字を打ち込み始めた。
どこか遠くにいる友人に、斎藤の事を報告しているであろう事は想像に難くなかった。
斎藤はゆっくりと代金を置いて席を立ち「ごちそうさま。」と囁いて店を出た。
道を塞いでいたカップルは、もうどこにもいなかった。
斎藤は、緊急の用事があるかのような早足で帰路に付いた。