A.ハロウィン・ホラー 『子供好き』
はっ、はわわ~
ぼんやりしてたら短編小説の集い締め切り当日じゃないっすか っべー まじっべー
という訳でまたもや滑り込み参加させて頂きます。
【第1回】短編小説の集いのお知らせと募集要項 - 短編小説の集い「のべらっくす」
『子供好き』
十月に入ったばかりの頃に、会社で「ハロウィンパーティーがある」という話を聞いた。
ハロウィン自体には全く興味は無かったが、僕は参加する事にした。
当日、簡単にマントのようなものと、猫の耳が付いたカチューシャで、仮装とも言えない仮装をした。
案外好評ではあったが、さすがに気合の入った仮装と比べると、ゴミみたいなものだった。
なぜ参加する事にしたかというと、それはただの飲み会の延長線上のイベントではなく、家庭を持った人間が家族を連れてくるからだ。
愛妻に軽口を叩かれて形無しの同僚や、子供の前で目を細める鬼上司を見るのは好きだ。
こんな美人がなぜこんな夫と、と思うようなケースも、夫の職業を聞けば全てが腑に落ちたり、まさか結婚しているとは思わなかった人が結婚していたり、ともかく、毎日顔を見る相手の、知らない一面を見る事が出来る。
なにより、僕は結婚をしていなかったから、子供と話ができるのが楽しかった。
昨今は、子供の落し物を拾って声をかけただけで事案になるような時代だ。
男の子供好きは、こんな機会でも無ければ子供に遊んでもらえない。
子供を無責任にちやほやと褒め散らかし、適当に遊んでやれば、親達はさっさと子供好きのグループに子供を任せ始める。
それは始めての事では無く、顔なじみの子供ともなれば、親も安心して預けてくれる。
僕は、子供好きの女性数人と共に子守を楽しんだ。
時刻も遅くなり解散となる。
僕はそのまま帰ろうとしたが、一緒に子守をしていた女性から、二人だけで二次会へ行かないか、と誘われた。
断っても良かったのだが、彼女はパーティーの写真を熱心に撮っていた事を思い出して、次の店に行く事にした。
僕は子守はするが、子供の写真を撮る事はしない。
両親が心配するだろうし、それは僕の本意とする所ではない。
でも、彼女が撮った写真を見せてもらうくらいは、大丈夫だろうと思った。
写真を見せてもらうタイミングを計りかねていると、彼女も何かを言いたそうにしている事に気が付いた。
がっつくのも怪しいので、先に向こうに話をするようにそれとなく差し向けると、彼女は熱っぽい視線をこちらに向けた。
―――ずいぶん子供好きなのに、結婚しないんですか?
まさかな、という気持ちと、いやいや、という気持ちの間で揺れながらも、落ち着いて返答を返す。
―――結婚に向いてないんですよ。
そんな事ないですよ、と彼女は言い、こちらの顔を見上げた。
彼女の膝が、僕の膝に当たった。
参ったな、と思いながら、仕方なく白状する。
―――子供が、作れないんです。
えっ、と、彼女が絶句する。
秘密ですよ、と、苦笑いをして見せた。
すみません、と気落ちする彼女に、今日はおごりますよ、と声をかける。
嘘は言っていない。
僕は子供が好きだ。
逆に言えば、大人は好きではないのだ。